バレエ作品を知っておこう~ジゼル

お子さま・バレエ初心者向け

バレエには様々な作品がありますが、全てがハッピーエンドで終わるお話ではありません。
楽しいシーンがある一方で、ヒロインの死や恋人との別れがある「ジゼル」は、切ない気持ちにならずにはいられない感動作です。
ロマン主義時代に生まれたロマンティック・バレエの代表作品で、現在も各国のバレエ団で上演されています。

また、バレエスタジオの発表会でも上演されることが多く、コンクールでもペザント(秋の収穫祭の踊り)のヴァリエーションなどがよく踊られます。

今回はそんなジゼルの、切なくも美しいお話をご紹介したいと思います。

第1幕 村の収穫祭

ジゼル登場人物 第1幕

ぶどう畑が一面に広がる、ドイツのとある村。
この村では、ジゼルという少女が母親と2人で暮らしていました。

ジゼルは、村をよく訪れるロイスという青年に恋をしていました。ロイスもジゼルのことが好きで、今日も2人は楽しそうに過ごしています。
しかしロイスは、本当はアルブレヒトという名前の貴族きぞく。自分の身分をかくし、かわいらしい村娘のジゼルと会っていたのです。

ジゼルはマーガレットの花をつんで、花占いをしていました。
「あなたは私を愛してる、愛してない、愛してる・・・」花びらを1枚ずつちぎるジゼル。
しかし最後に残る花びらは「愛してない」になることに、とちゅうで気づいてしまいます。
不吉な結果に顔をくもらせるジゼルを見て、アルブレヒトはあわてて花びらを1枚ちぎり、「ほら、これで結果が変わった!もう大丈夫だよ」とほほえみました。

そんな2人をかげから、ヒラリオンという村の青年が見ていました。
ヒラリオンもジゼルのことが好きなのですが、ジゼルはアルブレヒトに夢中です。
「村の外から来たあんな男のどこがいいんだ・・・今に見ていろよ、あの男の弱みを見つけてやる」

やがてぶどうの収穫祭しゅうかくさいがはじまり、娘たちが楽しそうに踊りはじめました。
ジゼルとアルブレヒトも踊り出しますが、ジゼルの母親は、が弱い娘が倒れないか心配しています。
「ジゼル、そんなに夢中になって踊っているとウィリになってしまうよ」

ウィリというのは、この地方に昔から伝わる精霊せいれいのことです。踊り好きの娘が結婚前に死ぬとウィリになってしまい、毎晩森の沼にあらわれて、迷い込んだ男を死ぬまで踊らせる・・・という伝説があるのです。

ウィリの話を聞いた村娘達がこわがっているとき、村に角笛つのぶえの音がひびきわたりました。
貴族の一行が、狩りのとちゅうで村に立ち寄ったのです。

「ようこそいらっしゃいました」と貴族達をおもてなしするジゼル。
貴族の中には、ジゼルと同じくらいの年頃のバティルドという娘がいました。
ジゼルとバティルドは話をしているうちに親しくなり、ジゼルに恋人がいるという話を聞くと「あら、私と同じね」と、自分の高価な首飾くびかざりをジゼルにプレゼントしてくれました。

きれいな首飾りに喜ぶジゼル。そこにとつぜん、ヒラリオンが勝ちほこった顔でやってきて言いました。
「ジゼル、君と仲良くしているあの男は貴族だ!その証拠しょうこに、あの男が小屋に隠していた剣を見つけたぞ。君が結婚できる身分の相手ではないんだ。」
ヒラリオンが持ってきた剣には、貴族の角笛と同じ紋章がついていました。

「ウソでしょ?ロイス!?」
ジゼルはアルブレヒトに問いかけましたが、アルブレヒトは答えてくれません。
さらに悪いことに、首飾りをくれた貴族のバティルドとアルブレヒトが婚約していることを知ってしまいます。

真実を知ったジゼルは、はげしいショックを受け、さっきまで大事そうにつけていた首飾りを投げ捨てました。
心臓しんぞうが弱いのもあったせいでしょうか。ジゼルはその後フラフラと倒れ込んで、そのまま息絶いきたえてしまいました。
アルブレヒトやヒラリオンが後悔しても、もう手遅れでした。

第2幕 森の沼のほとり

ジゼル登場人物 第2幕

森の中にある沼のほとり。
月明かりの下、ヒラリオンがジゼルの墓参はかまいりにやってきました。
すると、不気味な鬼火が飛んできて、ヒラリオンはおびえて逃げ出しました。

ヒラリオンが去ったあと、ウィリの女王ミルタがあらわれ、怪しくも美しい踊りをはじめました。
やがてたくさんのウィリが集まってきました。村に伝わるウィリの話は本当だったのです。

ミルタが杖をふりかざすと、墓のなかからジゼルのれいが姿をあらわしました。
ジゼルもまた、ウィリにさせようとしているのです。

そこにちょうど、ヒラリオンと同じくアルブレヒトも、ジゼルの墓参りにやってきました。
百合の花をお墓にささげようとしたアルブレヒトは、あらわれたジゼルの霊を見ておどろきます。
失ったジゼルへの、後悔といとおしさで、アルブレヒトは胸がいっぱいになりました。
そしてジゼルもまた同じで、死んでもなお、アルブレヒトを愛する気持ちは変わりません。

一方、逃げ出したヒラリオンはウィリ達につかまってしまい、無理やり踊らされていました。
はげしく、息も続かないほど踊ったのち、ヒラリオンは森の沼に沈められてしまいました。

そして今度はアルブレヒトの番とばかりに、ミルタとウィリ達がアルブレヒトを囲みます。
そこにジゼルが立ちはだかり、「アルブレヒトを殺さないで欲しい」とミルタに頼みました。

しかしミルタは、ジゼルの願いを聞き入れず、アルブレヒトを死ぬまで踊らせようとします。
ミルタに命令されたジゼルもまた、逆らえずにアルブレヒトと踊り出しました。

アルブレヒトがはげしく踊る中、ジゼルは彼がどうにか助かるようにと、かばうように踊り続けました。
やがて踊り疲れ、アルブレヒトの命がつきようとしたその時・・・。夜が明けて森に光がさし込みました。
朝日をあびたミルタとウィルたちは、姿を消していきます。するとアルブレヒトも踊りから解放され、彼の命は救われました。

そして精霊となったジゼルも、アルブレヒトに最後の別れをつげ、光とともに消えていきました。
後には一人残されたアルブレヒトが、いつまでもたたずんでいました。

アルブレヒトの本心は?

婚約者がいるのに、村娘のジゼルにちょっかいを出すアルブレヒト。
このお話を知って「ひどい!ジゼルかわいそう!」と思う方もいるのではないでしょうか。

ではアルブレヒトの本心はどうだったのか、ジゼルのことを本当に愛していたのか・・・というと、同じジゼルでも、演じる男性ダンサーによって演出が違ってくるんです。

バティルドとは貴族の間で決められた愛のない婚約をしていて、本当は心からジゼルを愛し、身分を捨ててでもいずれ結ばれたいと思っていた・・・というように演じられることもあります。

または、最初は村娘のジゼルをちょっとからかうだけのつもりが、自分がきっかけで命を落とすことになってしまう。ジゼルを失ってから、第2幕で彼女との本当の愛に気づいていく・・・という展開も。

作品によって演出も異なり、感じ方もそれぞれ違ってくるのがこの作品のおもしろさの1つだと思います。機会があればぜひ、いろいろな「ジゼル」をご覧になってみてくださいね。

新国立劇場チャンネルより ジゼル-新国立劇場バレエ団3分でわかるバレエシリーズ

タイトルとURLをコピーしました