バレエ作品を知っておこう~眠れる森の美女

お子さま・バレエ初心者向け

前回まで、バレエ三大作品と言われる「白鳥の湖」「くるみ割り人形」をご紹介してきましたが、最後の作品は「眠れる森の美女」です。

眠れる森の美女といえば、童話やディズニーの映画でも有名なので、物語の概要をご存じの方も多いのではないでしょうか。

バレエ版の物語で特徴的なのは、第3幕で様々なおとぎ話のキャラクターが登場することです。
結婚のお祝いにきた、長靴をはいた猫と白い猫、青い鳥とフロリナ王女、あかずきんちゃんと狼、シンデレラと王子・・・といったキャラクターのディベルティスマン(余興の連続した踊り)があり、とても賑やかです。
意外なキャラクターの登場に「えっ、どうして突然?」と驚く方も多いようですね。

バレエコンクールでも、眠れる森の美女のバリエーションは人気があり、オーロラ姫をはじめ、リラの精、宝石、フロリナ王女、青い鳥(男性バリエーション)などがよく踊られます。

プロローグ

昔々、ある国でとても美しい姫が生まれました。
王様とお后様は大喜び。姫を「オーロラ」と名付け、お祝いの盛大な式典を開くことにしました。

式典の当日、お城は招待されたたくさんの人々で賑わいました。
その中の招かれた妖精達は、贈り物にと、「美しくなりますように」「優しい心になりますように」・・・と、それぞれ素敵な魔法をオーロラ姫にかけていきます。

ところが、最後にリラの精が贈り物の魔法をかけようとした時、突然雷がとどろき、カラボスという悪の精が現れました。

カラボスは、自分だけが式典に招かれなかったことを恨んでいました。
カラボスは王様をにらみつけ、オーロラ姫に「16歳の誕生日に指を刺されて死ぬ」という恐ろしい呪いをかけ、消えてしまいました。

王様とお后様が嘆いていると、リラの精が言いました。
「お待ちください、私の贈り物がまだ残っています。カラボスの強い呪いは消せませんが、姫が死ぬことのないように呪いを変えましょう。指を刺された姫は長い長い眠りにつきますが、いつか運命の王子様の口づけで目を覚まします。」

王様はリラの精に感謝すると、国中からとがったものをなくすよう、おふれを出しました。

第1幕 オーロラ姫の誕生日

やがて月日が流れ、美しく優しく成長したオーロラ姫は、16歳の誕生日を迎えました。誕生日に行われた舞踏会には、求婚しようとたくさんの男性が城に訪れ、姫をダンスに誘います。

姫が男性たちと踊り終わった時、1人のおばあさんが現れました。
おばあさんは誕生日のお祝いにと、姫にバラの花束を渡します。

しかしそのおばあさんは、実は魔法で姿を変えた悪の精、カラボスだったのです。
花束のバラのトゲが姫の指に刺さり、姫は倒れてしまいました。

正体を現し、高笑いを残して消えるカラボス。
王様とお后様がかけより、必死に声をかけても、オーロラ姫は目覚めません。

そこへリラの精が現れました。
「大丈夫です、姫は眠りについただけ」
そう言うと、姫が目覚めるとき皆も一緒に目覚められるようにと、お城中の人々に眠りの魔法をかけました。

そして、まるでお城を守るかのようにいばらが茂りはじめ、ついにはお城は茨ですっかり覆い隠されてしまいました。

第2幕 王子との出会いと目覚め

それから百年後。
デジレという凜々りりしい王子とその一行が、森で狩りをしていました。しかしその日の王子は、なぜか狩りに気が乗らず、一行から離れて独りで物思いにふけっていました。

そこにリラの精が現れ、「王子様、どうかこれをご覧ください」と、魔法でオーロラ姫の幻を見せます。
「なんて美しい女性なんだ。このお方はどなたですか?」
リラの精から事情をきいた王子は、姫の眠るお城へと向かいます。

王子は、茨をかきわけて城内に入っていきました。
お城では、美しい姫が100年前と変わらない姿で眠っています。
王子が姫に口づけをすると、姫が、そしてお城の人々が目を覚ましました。

お城には賑わいが戻り、王子は姫に結婚を申し込みました。

第3幕 結婚式

お城では、オーロラ姫とデジレ王子の結婚式が行われています。

さまざまな宝石の精、長靴をはいた猫と白い猫、青い鳥とフロリナ王女、あかずきんちゃんと狼、シンデレラとフォーチュン王子・・・、とお祝いの踊りが次々披露されていきます。

結婚を祝福する人々に囲まれて、オーロラ姫とデジレ王子も幸せそうに踊ります。
今までずっと見守ってきたリラの精も、幸せそうな2人を見てやさしくほほえんでいました。

カラボスの不思議

ディズニーの映画でも有名な「マレフィセント」。バレエの眠れる森の美女では、悪の精「カラボス」として登場します。
そのカラボスですが、先程ご紹介したストーリーでは、第1幕までの出演となっていました。

しかし脚本によっては、第2幕で王子が城に入るのをカラボスが邪魔したり、王子に倒される展開もあります。

また第3幕で、リラの精と共にカラボスが結婚をお祝いする、という驚きのパターンも。
「あれだけ酷いことをしておいて、なんで結婚式でお祝いしてるの!?」と思ってしまいますが・・・もともとカラボスは完全な悪役ではなかった、という話もありますね。
以前カラボスを招待せずにあのような事態になったため、結婚式ではカラボスを正式に招待した、ということなのかもしれません。

カラボスをはじめ、バレエの物語では役柄によって、「どうしてこんなことをするの?」と思うような行動をとることがありますよね。
例えば、白鳥の湖の悪魔ロットバルトも、どうしてオデットを白鳥に変えたのか、ちゃんとした理由が分かっていないようです。

作品を鑑賞するとき、そして役を演じるとき、それぞれの役柄の生い立ちや気持ちを想像してみるのも、バレエの楽しみなのかもしれませんね。

新国立劇場チャンネルより 眠れる森の美女-新国立劇場バレエ団3分でわかるバレエシリーズ

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