「ドン・キホーテ」といえば、主人公の老騎士が風車に突っ込んでいくお話、として有名ですね。
(何でも揃うあのお店の名前としても有名ですが・・・実は店名の由来も、このお話からきているそうですよ☆)
しかしバレエ版のお話では、実はドン・キホーテは脇役。「キトリ」と「バジル」という若い男女が主役の恋物語なんです。
元気いっぱいのキトリをはじめ、様々な個性のキャラクターが登場して本当に賑やか!私も大好きなお話です。
バレエの発表会でもよく踊られる人気作品で、国内外のバレエ団でも公演が行われています。
また、コンクールでも、ドン・キホーテのキトリ、キューピッド、ドルシネア姫、森の女王などのバリエーションがよく踊られます。
みんなが明るく楽しい気持ちになれる物語なので、ぜひご覧になってみてくださいね!
プロローグ
ここはスペインのとある村。
ドン・キホーテという老人が、騎士物語の本を夢中になって読んでいます。
夢中になるあまり、物語に登場する「ドルシネア姫」(よくドルネシア姫と間違えられやすいのでご注意)を自分が騎士になって守る、という空想にとりつかれてしまいます。
ドン・キホーテは家にある洗面器をカブトのように頭にかぶり、火かきぼうをヤリのように持ちました。
そして、いとしのドルシネア姫に会うために、気が弱く食いしんぼうのサンチョ・パンサという農夫をお供にし、冒険の旅へと出発するのでした。
第1幕 港町バルセロナ
いっぽう、ここはバルセロナというにぎやかな港町。
町の広場には、宿屋の娘キトリと、床屋の息子のバジルがいました。
キトリとバジルは恋人同士。しかし、キトリのお父さんのロレンツォ(ロレンソ)は、2人の結婚を許してくれません。
ロレンツォは、バジルよりもお金持ちのガマーシュと、キトリを結婚させようとしているのです。
しかしキトリは、気取っているガマーシュとなんか結婚したくありません。
結婚を許す許さないで、キトリ達は大さわぎ。闘牛士や踊り子達もやってきて、広場はいっそうにぎやかになります。
そこにやってきたドン・キホーテとサンチョ・パンサ。
ドン・キホーテは美しいキトリを見たとたん、キトリをドルシネア姫だと思い込んでしまいます。
「おぉ、いとしのドルシネア姫よ!」
とつぜんやって来たおかしな老騎士に、広場はますます大混乱。
その騒ぎのすきに、キトリとバジルはこっそり広場を抜けだして、かけおちします。
第2幕 第1場 ジプシーの野営地
キトリとバジルは、風車のそばにあるジプシー達の野営地まで逃げてきました。
かけおちしてきたことを話すと、ジプシー達は2人をかくまってくれます。
そこに、2人を追いかけてきたドン・キホーテとサンチョ・パンサがやってきました。
ジプシーたちは、キトリとバジルをかくし、人形劇で彼らをもてなそうとします。
しかしその人形劇に出てくる悪者を、ドン・キホーテはドルシネア姫をねらう悪者だとかんちがい。
人形にとっしんし、劇をめちゃくちゃにしてしまいます。
おまけに、そばにあった風車も、またまた悪い巨人だとかんちがい。
しかし、風車にもとっしんしていくドン・キホーテですが、風車の羽根にひっかり、ポーンと放り出されてしまいました。
第2幕 第2場 ドン・キホーテの夢
放り出され、気をうしなったドン・キホーテ。彼は夢を見ていました。
夢の中では美しい森の光景が広がり、森の女王や妖精達が優雅に踊っていました。
かわいらしいキューピッドも現れ、案内されるままついて行くと・・・なんとそこにいたのはドルシネア姫!
姫の美しい踊りを、ドン・キホーテはうっとりしてながめます。
そして思わず姫の手を取り声をかけようとすると・・・姫は静かに消えていき、ドン・キホーテは目を覚ましました。
目を覚ましたところは、町の居酒屋。気を失ったドン・キホーテを、バジルが連れてきて介抱してくれていたのでした。
第2幕 第3場 居酒屋
居酒屋でドン・キホーテを介抱していたキトリとバジルですが、追いかけてきていたロレンツォとガマーシュに見つかってしまいます。
無理やりガマーシュと結婚させられそうになるキトリ。
その光景を見て、もうキトリと結婚できないと絶望したバジルは、ナイフを自分の胸に突き立てて倒れてしまいます。
あわてて、泣きながらバジルにかけよるキトリ。でも実はこれ、バジルのお芝居なんです。本当はケガなんかしていません。
それに気づいたキトリは、バジルのお芝居に合わせます。泣きながら、お願いだからバジルと結婚させてほしい、とロレンツォにたのみました。
ドン・キホーテも一緒に、2人の結婚を許してあげてはどうか・・・とたのみます。
悩むロレンツォですが、ついに2人の結婚を許します。
そのとたん、バジルは元気に起き上がって喜びました。お芝居にだまされたロレンツォはしまった!と思いましたが、もう手遅れ。居酒屋にいる人達は、2人のことをにぎやかにお祝いします。
第3幕 結婚式
町では、キトリとバジルの結婚式が行われています。
友人たちも華やかに踊って、2人の結婚をお祝いしました。
幸せそうに踊る2人を見届けたドン・キホーテとサンチョ・パンサは、本当のドルシネア姫に会うために、ふたたび旅立っていきました。
ドン・キホーテが決闘!?
マリウス・プティパが振付したこの作品ですが、実は何度か改訂が行われています。
今回は一般的に上演されることが多いお話をご紹介しましたが、場合によっては、第2幕が居酒屋のシーンからはじまることもありますし、ドン・キホーテがバジルやガマーシュと決闘するシーンが入ることも!
ドン・キホーテも他のバレエ作品と同様に、いろいろな作品を見比べてみると楽しいかもしれませんね。
新国立劇場チャンネルより ドン・キホーテ-新国立劇場バレエ団3分でわかるバレエシリーズ