前回は切ない恋物語「ジゼル」をご紹介しましたが、今回は観ていて楽しい気持ちになる「コッペリア」のお話です。
「コッペリア」は、明るく勇気のあるヒロインのスワニルダをはじめ、ちょっと軽い性格のフランツ、美少女人形のコッペリア、変わり者のコッペリウス・・・など、個性豊かなキャラクターが登場する明るい恋物語です。
バレエスタジオの発表会でもよく公演される人気作品です。またコンクールでは、女性ならスワニルダのヴァリエーション(第1幕または3幕)、男性ならフランツのヴァリエーション(第3幕)、などが踊られます。
第1幕ではマズルカやチャルダッシュといった民族舞踊、そして第3幕ではディベルティスマン(余興の連続した踊り)が繰り広げられる、華やかなバレエ作品コッペリア。ぜひ一度ご覧になってみてくださいね。
第1幕 村の広場
ここは、ポーランドのとある農村。
コッペリウスという老人の家のバルコニーでは、今日も美しい少女が本を読んでいました。
村人達はその少女を「コッペリア」と呼んでいましたが、コッペリアは一度も家から出てきたことがありません。
明るく活発な女の子スワニルダは、コッペリアに手を振ったりほほ笑みかけますが、コッペリアは目もくれず本を読みふけっています。
「あの子って変わってるわね、いつも座って本を読んでばかり。たまには外に出てきたらいいのに」
そこに、村の青年フランツがやってきました。
フランツはスワニルダと婚約している恋人であるにもかかわらず、もの静かな美少女のコッペリアが気になって仕方がないようです。
スワニルダがこっそり見ているのにも気づかず、フランツはコッペリアに大きく手を振ったり投げキッスをしたり、気づいてもらおうとアプローチしています。
スワニルダはイライラ。「フランツってば!私よりあの子が好きなの!?」と、怒りながら彼の前に出てきました。
フランツはあわてて「本当に好きなのは君だよ」とフォローしますが、スワニルダの機嫌は直りません。
その後、麦の穂占い(麦の穂を振って音がすればその愛は本物、という占い)をしますが、スワニルダがいくら穂を振っても音がなりません。
結局2人のケンカはおさまらず、婚約も解消してしまいました。
夕方になると、コッペリウスが家から出てきました。
そのとき家のカギを落としますが、コッペリウスはそれに気づかず行ってしまいます。
それを偶然見ていたスワニルダと友人達。
「ねぇ、拾ったこのカギで、こっそりコッペリウスの家に入ってみない?」とスワニルダが言いました。
いくら声をかけても相手にされない気取り屋のコッペリアに、直接会ってみようと思ったのです。
友人達もおそるおそるスワニルダの後に続いて、家の中に入っていきました。
その後、何も知らないフランツがやってきました。
フランツもまたコッペリアにこっそり会いにいこうと、コッペリウスの家にはしごをかけ、2階からしのびこもうとしていたのです。
そして家のカギを探しに戻ってきたコッペリウスは、そんなフランツの様子を見てニヤリ。何かたくらんでいるようです。
第2幕 コッペリウスの家
スワニルダと友人達は、コッペリウスの薄暗い部屋に入っていきました。
部屋にはたくさんの人がいて、スワニルダ達はドキっとしました。しかしよく見てみると、どれも人間そっくりに作られた人形ではありませんか。
カーテンの奥にはコッペリアが座っていましたが、何と彼女もまた人形でした。
恋敵がただの人形だったことを知り、スワニルダはほっと胸をなでおろしました。
みんな人形と分かれば、こわくなんてありません。スワニルダと友人の娘達は、楽しそうに人形を動かしてさわぎはじめました。
そこに、コッペリウスが怒りながら部屋に入ってきて、「私の家で何をやってるんだっ!出て行け!!」と娘達を追い払いました。
しかし1人だけ逃げ遅れてしまったスワニルダ。見つからないように、こっそりコッペリアのいるカーテンの奥に隠れます。
その騒ぎを知らないフランツは、そっとコッペリウスの部屋にしのびこみました。
部屋に入ったとたんコッペリウスが待ち構えていたので、フランツはびっくり!
しかしコッペリウスは怒りもせず、なぜか上機嫌でフランツを迎え入れました。
とまどうフランツに、コッペリウスは「まぁ飲みたまえ」と飲み物をすすめます。
実はその飲み物には、眠り薬が入っていました。フランツはそれを飲み、すやすやと眠り込んでしまいます。
「ふふ・・・うまくいったぞ。あとはこの男の魂を、かわいいあの子に移せば・・・」
何とコッペリウスは、フランツが眠っている間に魂を抜きだして、お気に入りの人形のコッペリアに移し、命を吹き込もうと計画していたのです。
その様子をカーテンのうしろから見ていたスワニルダは、フランツを助けるにはどうしたらいいか考えました。ケンカもしましたが、やっぱりフランツのことが大好きなのです。
やがてスワニルダは何かひらめいたようで、コッペリアの服を脱がし、その服に着替えはじめました。
魂を移す儀式なのでしょうか。コッペリウスは、何やら怪しげな呪文を唱え始めました。
するとどうでしょう、人形のコッペリアが本当に動き出したではありませんか!(本当はコッペリアの服を着たスワニルダなんですけどね)
それを見たコッペリウスは大喜びです。興奮しているせいか、人形がスワニルダということにも気づきません。
最初はぎこちなかった人形の動きもだんだん変化し、人間らしく滑らかに
「やったぞ!大成功だ!!」とコッペリウスが感激していると、その騒ぎでフランツが目を覚ましました。
フランツが目を覚ますとスワニルダはかけより、「逃げるわよ!」と彼の手を取りました。2人は急いで家を飛び出しました。
後には、ぼうぜんとたたずむコッペリウス、そして服をぬがされて倒れているコッペリアが残されました。
第3幕 結婚式
村のお祭りの日。
コッペリアが人形だったということを知らされ、助けられたことで、心からスワニルダを愛していると気づいたフランツ。2人は仲直りし、めでたく結婚式をあげることになりました。
とそこに、「家に勝手に入られた上、大事な人形にひどいことをされた!」とコッペリウスがかんかんに怒りながらやってきました。
フランツの魂を人形に移そうとした悪だくみはあったものの、コッペリウスにとっては実の娘のようにかわいがってきた人形だったのです。
ごめんなさい、とスワニルダは素直にあやまりました。
そんなやりとりをみて、村長も「まぁまぁ」と間に入り、その場をうまくとりなしてくれました。
最後にはコッペリウスも2人のことを許し、結婚をお祝いして去って行きました。
さぁ、いよいよ結婚式です!
時の踊りからはじまり、あけぼの、いのり、仕事、結婚、戦い、平和、祭り・・・といった様々な踊りが繰り広げられます。
村の人達に祝福され、スワニルダとフランツも幸せそうに踊っていました。
現代風のコッペリアも!?
コッペリアというと、民族衣装や民族舞踊のイメージが強い作品かもしれません。
その一方で、現代風にアレンジされたコッペリアがあるのはご存知でしょうか。
2016年から上演されたオランダ国立バレエのアレンジ作品は、登場人物の衣裳がレトロポップで、それぞれとても個性があるんです。例えばコッペリアの髪はボリューミーな金髪で、衣裳もビビッドなピンク!
舞台もまたモダンなデザインで、色どりも華やかです。
美容整形外科医のコッペリウスがコンピューターやリモコンで人形を操作する、といったような設定もユニークで、次はどうなるんだろう・・・と観ていて飽きないお話でした。
ロマンティック・バレエのコッペリアと比較しながら観ると、とても楽しめる作品なのではないかと思います。機会があればぜひご覧になってみてくださいね。